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ハワイ州憲法第1章第6節は、次のように規定しています。
「人々のプライバシーの権利は認められ、州のやむにやまれぬ利益が示されない限り、侵害されない。議会は、この権利を実施するために、是正措置を執ることができる。」
これも、前述と同様に、1978年の憲法改正で導入されたものです。わが国でも、憲法改正が実現すれば、たぶんプライバシーの権利が導入されることは確実でしょうから、その点では珍しい規定ではありません。
しかし、こういう概念内容がはっきりしない権利が、憲法上明記されると、いろいろと愉快な裁判が起きてきます。
例えば、プライバシーの権利は、個人のアパートで料金を取ってセックスをする権利を包含するものではない、という判決があります(66 H. 616, 671 P.2d 1351)。売春婦が、図々しくも売春をプライバシーの問題として戦ったという訳です。同様に、マリファナをリクリエーション目的で所有することは、プライバシーの権利で認めることはできないという判決もあります(86 H. 440, 950 P.2d 178)。こういった調子の、いわば苦し紛れの主張というべき事件がたくさんあります。
しかし、従来は認められなかったものが、この規定が制定された結果、肯定されたものもあります。その一つに、ポルノに関する次のような判決もあります。個人が自宅でポルノを読んだり見たり権利は、それらを個人目的で購入する権利を含んでおり、州憲法が認めているプライバシーの権利は、連邦法で認められている権利よりも大きいのだから、州は、ポルノを規制するためには、プライバシーの権利を規制するやむにやまれぬ利益を証明しなければならない、というものです(69 H. 483, 748 P.2d 372)。
社会のモラルの崩壊の危険性というような曖昧な理由では、やむにやまれぬ利益とはとうてい言えないはずですから、これはポルノの全面解禁につながることになります。わが国で、プライバシーの権利を憲法改正で導入するときには、こういうことも考えねばならないのだ、ということを考えさせる判決です。
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