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ハワイの憲法 その⑤ 異性婚

 投稿者:甲斐素直  投稿日:2007年 8月25日(土)08時35分30秒
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   ハワイ州憲法第1章第23節は、次のように規定しています。
    「議会は、結婚を異性間に保留する権力を有する」
 1998年11月3日の憲法改正で加えられたこの規定は、一見したところ、至って当たり前の内容です。この何の変哲もない規定を、なぜわざわざ面倒な憲法改正手続をした上で付け加えたのか、首を捻る人は多いと思います。しかし実は、この改正は、単にハワイだけでなく、米国中に大反響を呼んだ規定なのです。例えばウォール・ストリート・ジャーナルという堅いメディアまでが「ついにハワイはゲイの結婚を認めるか」という見出しを掲げて、この改正の是非を争う州民投票が実施されることを報じたのです。
 この問題、ハワイ州最高裁判所の違憲判決が発端です。そして、憲法の条文的には、先に説明した、連邦や他の州には存在しない性差別禁止条項(1条第3節)が問題の原因です。事件は1990年12月にNinia Baehrを始めとする3組計6人の男女が、いずれも同性同士の結婚のための結婚許可証(marriage license)の発行をハワイ州厚生省に求めたことから始まります。担当官は、これらの申請を同性婚であることを理由に拒否しました。そこで彼らは、1991年5月ハワイ州厚生省長官 John Lewinを相手取って、同性であることを理由に申請を拒否するのは違憲であるとして訴えました。被告勝訴の判決が同年10月に下ったところから、Baehr達は最高裁判所に上訴しました。
 ハワイ憲法1条3節は、俗に男女平等条項と呼ばれてきた訳ですが、その文言を見れば、性を理由として差別することを禁止しているのです。そして、確かに同性婚の禁止は、性に基づく差別であることは、間違いありません。そこで、最高裁判所は、連邦最高裁の判例などを参考に、性差別問題においては厳格に審査するべきであるとし、州が制限するについてやむにやまれぬ利益を証明しない限り、制限は違憲になるとしたのです。そして、やむにやまれぬ利益があるかどうか、きちんと審査しろ、と、1993年に原審に差し戻しました(Baehr v. Lewin、74 Haw. 645, 852 P.2d 44)。
 これを受けた下級裁判所は、審理の結果、子どもの教育や社会への悪影響や危険は証明されず、かえって、異性愛同様、緊密で良好な関係が存在することが明らかにされたとして、明確に違憲判決を下しました。もちろんこの判決に対しては、州側は再び最高裁に上告しました。しかし、最高裁判所判決を忠実になぞった原審判決が覆る可能性はきわめて小さいといわなければなりません。
 ここに至って、ハワイ州としては、この同性婚の許容問題を憲法レベルで解決する必要に迫られたという訳です。この経緯を知ると、一件何の変哲もない23節の意味がわかります。議会に、同性婚を許容するか否かの決定権を留保することにより、最高裁判所の違憲判決を阻止しようということです。
 ハワイ憲法の場合、こうした個別条項の追加・改正方法は日本国憲法の場合と同じで、議会が発議し、州民投票で最終的に決定します。しかし、この憲法改正案が成立するかどうかはきわめてデリケートに見えました。そこには、いま一つのきわめてハワイ的な要因が存在していたからです。ハワイの人口の過半数はキリスト教徒ではない、という事実です。ハワイ州の2000年度の統計書に依れば、キリスト教徒351,000人 (28.9%)、仏教徒110,000人 (9%)、ユダヤ教徒10,000人 (0.8%)、その他750,000人 (61.1%)となっていて、キリスト教徒の比率は3割未満なのです。その他の中には、無神論者を筆頭に、儒教、道教、ドルイド、ハワイ原住民信仰、ヒンドゥー教、イスラム教、シーク教、神道、サイエントロジー、ユニタリアン、ソロアスター教、魔術崇拝といった実に雑多な宗教が存在しています。そして、全人口の69%は、何を信仰しているかはともかく、何の宗教組織にも属していないのです。
 そして、同性婚の禁止というのは、明らかにキリスト教の教えに基づいています。つまり、神はアダムのためにイブという異性を作ったのだから、同性婚は神の意志に反するというのが、同性婚が許されない根本的な理由です。したがって、キリスト教徒が少数派のハワイでは、この異性婚主義を明定する憲法改正案が流れる可能性は十分にあります。改正が流れれば、最高裁の違憲判決が確定し、同性婚が認められることになる訳です。
 そのため、同性婚推進派及び否定派は、共に数十万ドルの資金を投入して、強力な宣伝戦を展開することになります。直前の世論調査では、改正案の支持率は5~6割程度という数字が出ていましたから、下限の数字が出れば、投票の帰趨はかなりきわどいものになる可能性がありました。全米の注目を集めたこの憲法改正は、1998年11月、結局6割の支持という世論調査の上限の数字が出て、無事に成立しました。
 最高裁判所は、この憲法改正の結果が出るまで審理を停止していましたが、この結果を見て、憲法改正により原告の訴えの利益は失われた、として、原告勝訴の判決を1999年12月に下したのです(Baehr v. Miikeという名称の事件です。MiikeというのはLewinの後任者です。)。
 ハワイ州は、しかし、この憲法改正を代償なしに実現した訳ではありません。州民投票前の1997年7月にハワイ州相互利益法(The Hawaii Reciprocal Beneficiaries law)により、相互利益関係(Reciprocal Beneficiary Relationship)という制度を導入したのです。これは、法的には結婚を禁止されている18歳以上の二人が、この相互利益関係にあるとハワイ州厚生省に登録すると、一定範囲で結婚しているのと同じような取り扱いを受けられるというものです。この対象は、例えば共同生活をしている友人(ホームズとワトソンみたいなものですね)とか離婚した母と未婚の息子の共同生活などが代表とされているのですが、もちろん同性カップルも含まれます。
 ハワイ州は声を大にして、これは同性婚を認めるものではない、といっています。しかし、単なる友人同士が、いくら長く同居してもそんな申告をする必要を感じることはあまりないでしょうから、事実上はもっぱら同性カップルのための制度になります。しかし、表面上はより広い目的の制度であるという巧妙な解決方法です。こういう、いわば同性カップルに対する救済措置を講ずるという事前の根回しも、州民投票における勝利の原因といえるでしょう。
 この騒動の発端となったハワイ最高裁判所1993年判決は、連邦レベルにもう一つの影響を与えました。クリントン大統領が結婚防衛法(Defense of Marriage Act)というものを1996年9月に作ったのです。これは、連邦や州は、他州が同性婚を認める制度を導入しても、それを承認する必要はない、というものです。
 米国では、婚姻を行うための要件は、州により、さらには郡によって異なる場合があります。だから、駆け落ちカップルなどは、婚姻の要件がとりわけ軽いことで有名なラスヴェガスなどに行って結婚する訳です。そして、普通の異性婚であれば、どこの法律に基づいて行われても、連邦や他州は、それを正式の婚姻として扱います。この結果、ハワイ州で憲法改正が流れて同性婚が認められるようになれば、他州はハワイ州における同性婚を承認しなければなりません。この法律は、連邦や他州が、そうした他州における同性婚の効力を否定し、自州の結婚制度を防衛するよりどころとなるという訳です。
 ハワイ州では上述の通り憲法改正が通って同性婚は阻止されましたが、マサチューセッツ州では、2003年 11月18日に、州最高裁が、同性婚を認めないのは州憲法の「状態の平等な保護条項」違反であるという判決を下しました。同州の場合には、結局、2004年 5月から同結婚の登録が始まっています。同性婚承認州の第1号という訳です。
 その結果、同性婚問題は2004年に行われた大統領選挙では、一つの大きな争点になりました。実に11の州(アーカンソー州、ジョージア州、ケンタッキー州、ミシガン州、ミシシッピー州、モンタナ州、ノースダコタ州、オハイオ州、オレゴン州、オクラホマ州、ユタ州)で、同性愛者の結婚を禁じる憲法改正案が提案され、大統領選と同日に行われた住民投票では、そのすべてが可決・成立しました。
 そうなると、いよいよ上記結婚防衛法が大事なことになります。困ったことに、この法律は連邦憲法違反の疑いが濃厚です。そこで、キリスト教保守派は、まず結婚保護法(Marriage Protection Act)を成立させようと試みました。これは結婚防衛法の合憲性をめぐる訴訟を連邦裁判所が取り上げることを禁じる法律です。取り上げられなければ、違憲判決が出る訳はない、という理屈です。同法案はブッシュ大統領の強力な後押しの下に、2004年6月に233 対 194で下院は通過しました。しかし、上院ではこれを棚上げにしていまい、今のところ成立していません。
 そこで、いまや正面攻撃の手段たる、同性婚を禁止する連邦憲法の改正が目論まれています。しかし、最初の試みは、2004年9月30日にアメリカ下院で否決されて潰えました。すなわち投票結果は、227対186で改正を認める議員が上回ったのです。しかし、連邦憲法改正を議会が発議するためには、上下両院において、それぞれの議席の3分の2を超える賛成が必要ですが、それには届かなかったのです。しかし、その後もその努力は続いています。2006年には連邦上院に提案されましたが、上院は同年6月8日、賛成49に対し反対48、棄権3で、やはりこれを否決しました。
 ちなみに、日本国憲法の場合、24条が「両性の本質的平等」を婚姻制度の本質的要素として要求していますから、米国とは逆に、同性婚主義を導入するためには、まず憲法改正が必要と考えられます。
 
 
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