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ハワイの憲法 その⑦ 未成年者に対する性的暴行

 投稿者:甲斐素直  投稿日:2007年 9月 7日(金)19時38分40秒
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   ハワイ州憲法第1章第25節は、次のように規定しています。
    「14歳未満の未成年者に対する持続的な性的暴行に対しては、議会は次の点を定義できる。
     1.どのような振る舞いが持続的なものといえるか
     2.陪審は、確信を抱くためにどのような点で一致すればよいか」
 これは2006年11月7日の投票で成立し、2007年から施行される予定の、できたての憲法改正です。一見したところ、何でこんな条文が必要なのか、判らない規定です。
 ハワイ憲法1条23節と同様に、この条文も、州最高裁判所のある違憲判決が原因となって行われた憲法改正です。
 原因となった事件は、Anthony Arceo(以下「A」といいます)という男が引き起こしたものです。Aは、1989年12月に、カルフォルニア州サンディエゴから、6歳の息子(以下「B」といいます)を連れて、ハワイ州のマウイ島に到着しました。Aの主張に依れば、そこに住む知り合いの家に転がり込むことを当てにしてきたというのですが、到着時にその知り合いはすでにその住所におらず、AとBは結果としてホームレス用のシェルター(一時宿泊施設)に直行しました。そこで、彼らはベット一つだけを与えられたので、当然6歳のBも、夜はその父Aと同じベットで寝、またシャワーも、Aの主張に依れば「息子はシャワーの使い方を知らないので」、Aは一緒に入ってBの身体中を洗っていました。1990年5月になって、マウイ郡警察職員がサンディエゴ地方検察庁からの連絡を受けてBを保護し、サンディエゴにいる母親の元に送還しました。判決文には書かれていませんが、父親が息子を誘拐して逃亡していたという事件だったようです。同年6月15日に、サンディエゴのソーシャル・ワーカーがBと面談したところ、BはAとともにハワイにいる間、一貫してAより性的暴行を受け続けており、非常に嫌だったと述べたことから、ここで問題となっている事件が発覚しました。
 ハワイ州統一法典707-730条b項は、「相手が14歳未満であることを知りつつ性交を行うこと」を第1級性的暴行罪(sexual assault in the first degree)と規定し、A級重罪(class A felony)に該当するとしています(重罪felonyとは、軽犯罪misdemeanorに対する言葉で、通常1年以上の懲役または死刑に処せられる犯罪を意味します)。また、同じく707-732条b項は、「相手が14歳未満であることを知りつつ、性的接触を行い、もしくは他者をして性的接触をなさしめたこと」を第3級性的暴行罪と規定し、C級重罪に該当するとしています。
 判決原文には、Aが具体的にどのような行為をしたとされた結果、第1級性的暴行罪に問われたのか、また、同じく第3級性的暴行罪に問われたのかについて、Bとソーシャル・ワーカーとの一問一答の記録の引用も交えて、詳細に記述されています。しかし、普通の感覚の方なら、かなり不愉快な感情を覚えること必至という代物なので、ここでは割愛します。とにかく、そうした行為に対し、結論として、検察側は、AがBに対し、上記のとおり1989年12月から1990年5月までの間、継続的に1級及び3級の性的暴行を行ったとして起訴したのです。
 このように不愉快な事件ですから、当然に陪審は、全会一致で有罪という答申を行いました。それに対してAが、この裁判は適正手続条項違反(ハワイ憲法1条5節=日本国憲法でいう31条)として上告したのです。ハワイ州最高裁判所が、それに対して1996年11月18日に下した判決が、ここでの問題を引き起こしました。
 判決は、第一に、第1級性的暴行、すなわち日本でいうところの強姦罪というものは、決して継続的なものではあり得ない、と指摘しました。一つ一つの行為が、独立の構成要件該当行為である以上、それぞれを別罪として構成し、起訴しなければならないというのです。確かにその通りです。仮にある男が特定の女性を半年間に2回強姦すれば、強姦罪が2罪成立するのであって、決してあわせて1罪という訳ではありません。しかし、この事件の問題は、肝心の証人がわずか6歳(裁判時点で7歳)の子供だという点です。彼は、シャワーを浴びながら髪をシャンプーしている時にAが背後から肛門性交したことが2回あるというようなことは言えるのですが、それが何月何日に起きたことか、というようなことまでは判らないのです。
 判決は第二に、こうも指摘します。第1級性的暴行があったというためには、性器が軽く押し込まれたという疑いを超えて、明確に性的挿入があったということを証明しなければならないというのです。確かに、これは、わが国においても、強姦罪における既遂と未遂を区分する重要なポイントです。しかし、これまた、こんなことを6歳の子供に理解し、どちらであったかを述べろといっても無理な話です。
 さらに判決は、裁判官は、陪審員団に対し、第1級性的暴行を行ったとして被告人を有罪と決定するには、どのような行為がなされていると認定する必要があるかを、きちんと指導する必要があると述べています。素人である陪審員は、細かな法律の要件を理解できるわけがありませんから、これまた当然のことです。
 すなわち、検察官が、このように別々に構成し、証明するべき一連の犯罪を継続的に犯された1罪として起訴した点、及びそうした問題点を原審裁判官が陪審員団に指示しなかったという二つの点で、原判決には明白な誤りがあるとしたのです。この結果、原判決は取り消され、差し戻しとなりました。
 この判決を受けて、州議会ではいろいろ検討したのですが、結局、このような事件では、継続的な行為という概念を導入する以外の立法手段がありません。それが、適正手続条項違反になると裁判所が言う以上、そうした立法を許容する、ここに示した憲法改正を実施する他はない、という結論に達し、2006年11月に州民投票に託しました。無事に改正が成立したので、この稿を執筆している時点では、これを受けた立法作業が行われているところです。
 日本でも、アメリカの陪審制度に類似した裁判員制度が、近い将来に導入される予定ですが、やはり裁判官がどこまで指導する必要があるかは、こうした事件では大きな問題になりかねません。
 
 
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