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ワシントン州の財政危機

 投稿者:甲斐素直  投稿日:2010年 8月23日(月)22時57分10秒
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   この夏休み、ワシントン州のシアトルに来ています。そこにあるマイクロソフト本社の会議場を借りて、小さな国際会議が開かれたのですが、そこで私が研究発表を行うためです。せっかくわざわざでかけて行ったのだから、と会議が終わった後に、ワシントン大学ロースクールを訪問し、そこの図書館を根城にアメリカ法の研究を行っています。
 私がシアトルに到着したその翌日、8月12日に、ワシントン州のグレゴア知事(Gov. Chris Gregoire)が重大な声明を出しました。ワシントン州は、過去2ヶ月だけをとっても、歳入は見積もりよりも125百万ドルも落ち込んでおり、州の銀行通帳はほとんど空なので、対策を講じなければならないという趣旨のものです。彼女は、その中で、「今回の不況は過去に経験したことがないものです。土砂降りの雨が続いた結果、非常用資金(rainy day fund)さえも底を突いてしまいました。我々は必ずやこの危機を乗り越えます…しかし、それは長く、困難な道です」と語ったのです。
 彼女は「ベルトを締める手段(belt-tightening measures)」として、福祉部門も含め、現会計年度(米国では、連邦の会計年度は10月~9月ですが、各州は7月~6月。しかし、ワシントン州は2ヶ年予算を組んでいるため、現年度とは2009年7月から2011年6月までのことです。したがって声明を発表した8月12日は現年度が半分ほど経過した時点ということになります。)において、全省庁にまたがって4~7%の職員を解雇するとともに、総額51百万ドルの歳出削減を断行する必要が、今後急速に経済が改善しない限りあると述べたのです。なお、このように財政危機に見舞われているのはワシントン州だけではなく、全米50州のうち48州に達するとも述べています(例外は、モンタナ州とノース・ダコタ州)。
 7%の人員削減を行うと、10月から現年度の終わり(2011年6月)までに、500百万ドルの節減効果があるそうです。そのため、同知事は、10月1日までに解雇のための準備を整えるようにと各省庁に指示しました。また、51百万ドルの歳出削減には、児童手当の削減、小中学校、短大及び大学に対する財政援助の削減等が含まれています。
 さらに彼女は、現年度だけでなく、2011年~2013年の次年度中における歳入の落ち込みは30億ドルに達すると見積もられているとして、各省庁に対し、歳出の一律10%削減を通告したと語りました。「必要に迫られて、政府は小さなものにならざるを得ません。我々はドラマチックなシフトを断行しなければなりません。本質的なサービスは今後も続けますが、それらでさえも可能な限り削減しなければなりません。」とのことです。
 この声明に興味を持って、私は少しワシントン州の財政状況について調べてみました。
 具体的な財政危機とその対応の詳細に入る前に、ワシントン州(State of Washington)そのものを簡単に紹介しましょう。州の名はアメリカ建国の父ジョージ・ワシントンに由来します。だから州旗にはワシントンの肖像が入っています。アメリカ西海岸最北部の州で、イチロウのいるシアトルマリナーズのある所、というのはどなたもご存じでしょう。あるいは、マイクロソフトの本拠地であり、コーヒー・チェーンのスターバックスの発祥の地ということをご存じの方もあると思います。
 面積は18万5千平方キロですから、日本(37万8千平方キロ)の約半分で、そこに666万余人(2009年度の国勢調査)が住んでいるというのですから、全体としてゆったりしています。州のニックネームは常緑の国(The Evergreen State)というのですが、その名の通り、本当に森と湖の国という感じのする州です。シアトル市は、直接の人口は州の約1割程度ですが、その通勤圏も含めれば州人口の6割までが集中しているとされ、輸送、経済、産業など、どの面から見ても中心都市です。しかし、なぜか州都はそこから南に少し離れたオリンピアという人口4万人ほどの小都市です。
 さて、財政面から見たワシントン州の最大の特徴は、個人に対する所得税も法人の所得に対する課税もないことです。そういう州は、全米でもわずか7州しかありません(ちなみに後の6州は、アラスカ、フロリダ、ネバダ、サウス・ダコタ、テキサス及びワイオミングです。)。それでどうやって州の歳入を確保するのだ、と心配になりますが、代わって存在するのが、法人に対する事業税(business and occupation tax=B&O)です。これは一種の総収入課税(gross receipts tax)で、労働の対価や材料費その他の間接経費を控除することを認めず、ただ、営業の種類に応じて控除可能な様々な法定の例外が認められ、営業の種類に応じた率で課税が行われます。この課税は、サービス額だけではなく、生産額に対しても行われます。このような税制を採用しているのは、全米でも、後はウェスト・バージニアがあるだけです。
 企業は、こうした租税を販売価格に上乗せして消費者に転嫁しますから、結局これは、購入に際して支払う消費税的な性格を持つことになります。商品やサービスの性格に応じて異なりますが、だいたい8~9%程度です。例えば、私は滞在期間中の足として、自転車を1週間単位で借りたのですが、借り賃週100ドルに対して、租税が9.5ドル乗ってきました。また、肉や野菜などの自然食品(Whole Foods)は非課税です。しかし、私の場合、ホテルの借りた部屋には簡単な台所はあるのですが、料理道具がないので、自然食品を買うわけにはいかず、近所のスーパーからお総菜(prepared foods)やソフトドリンクを買ってきて食事を摂っていますが、これらは課税対象になります。さらにガソリン、たばこ、アルコール飲料は物品税の対象にもなります。
 前会計年度(2006-2007年度)における総租税収入は41,266百万ドルですが、B&Oは17,087百万ドルとその41 % に達し、全米諸州の平均的な消費税収入の倍近くに達します。経済活動の冷え込みが、州の税収を直撃することがよく判ります。なお、州予算に占める租税収入の割合は44.7%で、連邦政府からの補助金が27.6%あります。この他に種々雑多な細かな収入があるわけです。
 現年度の歳出は、当初予算によると、義務教育費が全体の23%、同じく大学等の高等教育に対する予算が14%(ワシントン大学、ワシントン州立大学など、州立大学が全部で7あります。)、あわせて教育関係費用は全体の37%と3分の1を超えています。例え、基礎教育に深刻な影響が出ようと、これを削らなければならないことはよく判ります。ついで、福祉厚生予算が28%を占めています。こういう本来、削ることの不可能な予算をどうやって1割も削るかが今後の勝負です。グレゴア知事は、諮問委員会を設けたほか、公聴会やネットを通じてのアイデア募集に今後力を入れるとしていますが、果たしてどうなるでしょうか。
 
 
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